◆Woman blues◆
太一といるとほのぼのする感じで、凄く安心する。

だからといってそれを勘違いしたくない。

「夢輝さんは、僕といるのが嫌ですか?」

私はマジマジと太一を見つめた。

「嫌じゃないけど戸惑ってる」

「どうして戸惑ってるんですか?」

惨めだけど……言うしかない。

「だから、私みたいな年上のアラフォーに構う暇があるなら、もっと若くて可愛くて太一に似合う子がいっぱい」

「まただ」

私の言葉を遮るなり、太一は私を甘く睨むと素早く抱き寄せた。

「夢輝さん、僕は貴方にちゃんと告白したでしょう?」

たちまち心臓が喧しく脈打つ。

「好きなんだ。夢輝さんが」

そう言った太一の顔は真剣で、私は息を飲んだ。

「あなたにキスしたい」

抱き寄せられて、仰け反るように見上げる私に彼は続けた。

「なんでそんな可愛い顔するんですか?」

太一は私を見る眼を細めながら、その形のよい口を引き続き開いた。

「もう少し、僕とキスしたいって気持ちを隠してるあなたに付き合ってあげてもいいかなと思ってましたが……もう限界です」

「あ、あの……っ」

私の返事も聞かず、太一は私にキスをした。

間近に感じる太一の体温と柔らかい唇。

その短いキスは優しくて、それでいて少しだけ強引で、胸が踊るようなキスだった。

そうだ、確かに私はキスしたかった、太一と。

ふと回りを見て道行く人の視線を感じると、私は太一の胸をトンと叩いた。

「人が見てる」

クスッと笑うと太一はいっそう私を抱き締めた。
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