◆Woman blues◆
「あなたが悪いんです」

一旦言葉を切ってから、太一は再びこう言った。

「好きです、夢輝さん」

ああ、もう。

「……ありがと……」

「じゃあ、僕の部屋へ来てくれますか?」

「……うん……」

私は照れながらも頷いた。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「ちょっと部屋に寄りたいから、太一は先に帰ってて。すぐ行くから」

私がエレベーターの中でそう言うと、彼は首をかしげた。

「じゃあ、僕も行きます」

「いいよ、このまま乗ってて。先に仕事の資料を部屋に置いてきたいの」

今日の鞄は資料で重いから、一度部屋に寄って、鞄ごと置きたかったのだ。

マンション内だし、スマホだけで問題ないし。

「じゃあ後で」

私は太一に手を振るとエレベーターを降りた。

……服も部屋着に着替えたいな。

玄関の電気も点けずにパンプスを脱ぐと、私はリビングに向かいながら上着を脱いだ。

それからダイニングの椅子に着ていた服をバサッと掛けると、ソファの背もたれに引っ掛けたままの部屋着を取ろうと、リビングの明かりをつけた。

「きゃあっ!」

明かりがついた直後、ソファに座る人物の存在に心臓が縮み上がり、思わず私は悲鳴をあげた。
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