◆Woman blues◆
「……夢輝……」

ソファに秋人が座っていたのだ。

それも疲れた顔をして。

前屈みになって両膝に肘を付き、頭を抱えるようにしながら秋人はゆっくりと私を見た。

「……なにしてんの」

何故ここに秋人がいるのか目まぐるしく脳内で考えようとするが、まるで分からない。

……鍵だって返してもらったのに。

朝家を出る時、確かに鍵をかけた。

ということは……。

「まだ、スペアを持ってたの?……返して」

秋人はユラッと立ち上がると私を上から下まで見つめた。

下着姿を凄く後悔したけど、部屋着は秋人のいるソファの背もたれだ。

「これ着るんだろ?」

秋人は私の視線の先を見て、部屋着を手に取ると私に近寄ろうとした。

反射的に一歩下がった私を見て、秋人が僅かに眼を細める。

「……なんだよ」

言葉の端に苛立ちを含ませ、彼は私にもう一歩近付いた。

怖い。

秋人の眼が。

私は出来るだけさりげなく踵を返すと、廊下へ出て寝室のドアを開けた。

それから慌ててタンスを開けると一番上の服を手に取り広げる。

……早く着なきゃ。
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