◆Woman blues◆
泣くまいと思うのに、どうして涙が溢れてしまうのだろう。

「私みたいなババア、誰も相手にしないって。 ババアでも、抱いてもらえるだけ有り難く思えって……」

「夢輝さん」

太一が私を強く抱いた。

「夢輝さん、そんなの酔っ払いの戯言だ。あなたは本当に素敵な人です」

涼しげな眼を真っ直ぐに私に向けて、太一は切な気に顔を寄せた。

ああ。

自分を包んでいた靄が徐々に薄くなっていく感覚。

受け止めるのが怖かった太一の想いに答えたい。

今までの太一との出来事が脳裏を駆け巡る。

いつの間にか私は、太一がいない毎日なんて考えられなくなっていたようだ。

私は観念して認めた。

完全に太一を好きだと。

「……太一」

私は太一の首に両腕を絡めた。

「ん?」

太一の優しい笑顔。

彼のリビングで抱き合って、至近距離から見つめ合う私達。

「太一、私、太一が好きだよ」

「……え」

「助けてもらった恩から言ってるんじゃないよ。ほんとうに太一が好きになったの」

眉をあげて私を見つめ、ポカンとした太一に私はギュッと抱き付いた。
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