◆Woman blues◆
立ち上がった麻美にペコリと頭を下げて太一は微笑む。

そんな太一と自己紹介を交わした後、麻美は私を見てニターッと笑った。

嫌な予感がしたけれど、私にはどうすることも出来なかった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

三時間後。

「もう絶対、麻美と太一を会わさない!」

「ええー?!僕はまた三人で飲み会したいなあ!」

「だめ!」

ほろ酔いの私は、太一と手を繋いで駅からマンションまでの道のりを歩きながら毒ついた。

「麻美ったら、変な話をしすぎ!」

太一はクスクスと笑った。

「僕は聞けてよかったですよ?
一人旅に出掛けて自殺目的と間違われて旅館の人に後をつけられてた話とか」

麻美のヤツ。

「あとは、お店の前のマネキンがあまりにもカッコイイから触ろうとしたら生身の外国人男性だった話とか」

「あのね、その人が、ピクリとも動かなかったの。だからてっきりマネキンだと思って」

「あっははははは!」

ほんと、もう二度と麻美とは会わすまい。

「笑いすぎ」

私は決まり悪くなり、太一を睨んだ。

途端に太一に引き寄せられ、優しく唇を重ねられる。

さらりとした太一の前髪が頬に触れてくすぐったい。
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