◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆◆

「指輪の試作品会議はどうでしたか?」

二人で夕食の準備をしている時、太一が私に問いかけた。

私は会議を思い出してクスッと笑った。

「隆太がね、『夢のデザインなら俺が一番分かってる。だから会議なんてやんなくていーんだよ』なんて言うからさ、雑談みたいになっちゃって、そのうち二課と三課の試作品に話が移っちゃった」

確かに、私のデザインなら隆太が一番分かってる。

でも、企画部長のいる前で、あんな事言うなんて。

思い出して苦笑していると、太一のわざとらしい咳払いが響いた。

反射的に見上げると、

「隆太って呼び方、なんかムカつきます」

「……今更遠藤君なんて変だし」

言い終える前に、柔らかい感覚を頬に感じた。

「遠藤さんは男から見てもイイ男なので、僕は気が気じゃない」

唇を私の頬に擦り付けるようにした後、太一は拗ねたようにそう言って私を斜めから見下ろした。

「私だって……気が気じゃないよ」

私は昼間の怜奈ちゃんとの会話を思い出した。

女子社員がキャーキャー言ってるって。

「今日も課長と出掛けてたらしいじゃん。怜奈ちゃんが勉強熱心だって褒めてたよ」

私はそう言って包丁を持つ手を止めると、太一を見た。

太一はワイングラスを両手に持ってテーブルに置きながら、

「僕、好奇心が旺盛なんです。今のところは一課で任されている仕事がないので、社内の業務内容や流れを把握したくて課長にお願いしたんです」
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