◆Woman blues◆
以前とさほど変わらない答えが返ってきた。

「そーなんだ。で、どう?」

太一は手元に視線を落としたまま私を見ずに、

「凄く勉強になってますよ。ねえ夢輝さん、ワイン飲みましょう」

「まだ、料理出来てないのに?」

「作りながら食べて飲みましょう」

「それ、私の独りぼっちの夕食と同じスタイルだよ。座る前に夕食終了」

もう少し仕事の話を聞きたかったけど、私は諦めるとそう言って笑った。

◆◆◆◆◆◆◆

数日後。

「夢輝さん、僕今日は友人と飲み会なんです」

皆が帰り支度をし始めたオフィスで、太一は私にそう告げて微笑んだ。

「分かった」

「終わったら連絡します」

「じゃあ、気をつけて楽しんできて」

私は、軽く手を上げるとオフィスを出ていく太一を見送ってデスクへと戻った。

その時ラインの着メロが流れて、一瞬明るくなった画面に隆太の名前が表示された。

『夢、今から工場来られるか?試作品の加工中なんだけど確認してもらいたいんだ』

《少しやることがあるから、一時間後ならいいよ》

『了解』

短くやり取りを終えると、私は先日の隆太との会話を思い返した。
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