◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆◆

「ちきしょう」

「……ごめん」

隆太は私の言葉を聞いて、真夏の青い空を仰いだ。

会議に来ていた隆太を呼び止め、私は太一との事を正直に話したのだ。

「なんでアイツなんだよ。俺のが絶対イイ男だろーが」

私はクスッと笑った。

「イイ男だよ、隆太は。離婚したって聞いて、大勢の女子社員が色めき立ってるわよ」

「マジかよ」

隆太は私を見ずに笑った。

「でも、当分いいわ。お前が鮎川にフラれるかもしれねーからな。待っててやらないとお前は後がないし!」

「酷い言い様だね」

「イイ男を振った罰だ。
……俺、そろそろ行くわ」

「うん」

隆太はブレイクルームの窓からの空を相変わらず見ていたけど、最後に私の眼をしっかり見て笑った。

「夢、頑張れよ」

「うん。隆太も」

「ああ。じゃあな」

隆太は私の頭をクシャリと撫でて背を向けた。

私がそんな隆太の後ろ姿を見送っていると、隆太はああと言って肩越しに私を振り返った。

「同期で友達なんだから、飲みにぐらいは付き合えよな」

「もちろん」

今度こそ隆太はドアの外へと消え、私は窓の外の空を暫く眺めた。
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