◆Woman blues◆
扉が閉まるとホッと息をして、天井を仰ぎ眼を閉じる。

『僕が社長に就任したら、直ぐに案を出したいと思っています』

太一の言葉がグルグルと頭の中を回る。

太一が社長に就任?

太一が社長に?

今の社長とどういう関係?

頭の中が混乱して、マンションに着いても私は落ち着けなかった。

◆◆◆◆◆◆

「話があるんです、夢輝さん」

太一がインターホンを押したのは、私がマンションについてシャワーを浴びた後だった。

「……分かった」

ゆっくりと玄関ドアを開けるとスーツ姿の太一が立っていて、私はぎこちなく彼を見上げた。

「お邪魔していいですか」

「……どうぞ」

頷いてリビングへと戻る私の後を太一は黙ってついてきたが、

「……黙っててすみませんでした」

振り返った私にガバッと頭を下げて、彼は再び私を見つめた。

涼やかな茶色の瞳が、申し訳なそうに私を見ている。

私は太一の眼を見つめながら思った。

……どうして私は何の疑問も持たなかったのだろう。

よく考えてみると、太一が入社した時の課長の説明はやけにアッサリしていた。
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