◆Woman blues◆

裂ける心

◆◆◆◆◆◆◆

数日後。

太一が次期社長だという事は、当然の事ながら他言無用だ。

今はまだ。

就任予定は現社長の退任が決まり次第だが、どうやら彼女は60歳の誕生日を引き際にしようと思っているらしい。

「約一年後のその日まで、僕は一生懸命A&Eというこの会社について学んでおこうと思っています」

そう言って微笑んだ太一は、今までとなにも代わりがなくて、私は何だか不思議な気分だった。

穏やかで柔らかい雰囲気をいつもまとい、私を温かい眼差しで見つめる太一。

その時、急に怖くなった。

……私は……いいんだろうか、このままで。

何もない私のままで。

この先も太一は私を、今と代わりのない、愛に満ちた眼差しで見つめてくれるのだろうか。

いや、そんなうまい話があるわけない。

だって、私は彼より七歳も年下だもの。

ネガティブな感情が胸に芽生え、根を張る。

胸が苦しい。

……太一が遠くなっていく感じがしてならない。

見た目も恵まれてて頭も良い次期社長の太一が、近い未来私から離れていく気がする。

「いっ……!」

「夢輝さん、大丈夫ですか」

夕食の仕度をする中、うっかり指を切ってしまい、キッと鋭い痛みが胸にまで走る。
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