ただただ君が好きでした

「それを、マナトに話してん。ちょうど、あの事件の前の晩」

「え?あの夜ですか」

思い出す。家の近くで初めて会って話した夜。

お父さんが失礼なことを言ってしまったんだ。

「ハナちゃんと話した後に俺の家に来て、泊まってん」

家に再婚相手が来ているから居場所がないって言ってた。

「俺んちで朝方まで話してたかな。マナトは、ハナちゃんのことをその時に俺に話してくれて。大事にしてる子やからって。迫田のこと許されへん。どうにかして守りたいって言ってた」


大事にしてる子。
守りたい。


そんな風に思ってくれていたなんて。



怜次先輩は、遠くを見ながら続けた。


「俺はそれを聞いて、昔のことを思い出した。今回も、迫田は同じやり方でハナちゃんを追い詰めてるように思うって俺が話したら、マナトは本気で怒ってもうて……」

「そうだったんですね」

「でも、いきなり殴りかかるわけないねん。アイツは」

「そうですよね。私も絶対そう思います」



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