ただただ君が好きでした

「おっせー」

ゆっくり歩いていたせいで、後ろから追いつかれてしまった。

私を追い抜いた背中は、1年の日野さんだった。
男っぽくて、サバサバした性格が好きで入部当時はよくペアで練習していたっけ。

話しかけてくれたことが嬉しくて、声をかけてみた。

「日野さん!」

「早く走んないと、もうすぐ追いつかれるよ」

振り向きながらそう言った日野さんは、ニヤっと笑って私を置いて走って行った。

日野さんは、みんなが歩いている中でひとり走り出したの?

「待って!」

私は駆け出して、日野さんの隣まで追いついた。

「くっつくな、バカ!」

と私に肩を当てた。

「どうして、日野さんは、サボってないの?」

少し走っただけなのに息が切れる。

「テニスするために入部したんだから、走れって言われたら走るのが当たり前」

「真面目だね。私も見習わないと」

「あんたには負けるよ。真面目すぎて、ほんとバカ」

肩を寄せ合い走っている今の状況が信じられなくて、胸があったかくなる。


これも、さっきマナ先輩と会えたからじゃないかと思えてくる。

それとも、空にいるお母さんに話しかけたから?


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