ただただ君が好きでした
「日野さん、ありがとね」
「なつくな!バカ!」
「だって、嬉しいんだもん」
「私が何を言ってもアイツらは、変わらない。だから、あんたが自分で解決しな」
私が知らないところで、日野さんはカノンや真由達に何か言ってくれたのかもしれない。
私をかばってくれていたのかもしれない。
みんなが集まっているとみんな同じに見えてしまうけど、全員が私を誤解しているわけじゃない。
「そろそろ、追いついちゃうから私離れるね。一緒に走ってると、日野さんまで誤解されちゃう」
私はそう言って、走る速さを落とした。
「そういう変な気遣いもウザいって。真面目に走ってるのが私とあんたしかいないんだから、ふたりが一緒に走っててもおかしくない」
日野さんはグイっと私を腕を掴み、スピードを上げた。
そして、ダラダラ歩く1年の団体を抜かしながら
「お先~」
と言った。
私と日野さんの背中を見て、みんなが何を言っていたのかわからない。
そんなこと気にしなければいいんだ。
「すごい速かったね、今」
「聞きたくないことは、聞こえないようにすればいいんだって」
日野さんは強い。
日野さんは優しい。
「今日は本当にありがとう!」
外周を走り終えて、コートに戻ると先輩達は迫田と談笑していた。
「迫田、ウザ」
ボソっとそう言った日野さんに、私は激しく同意した。
「だよね!ウザいよね!」
「うん。あんたもウザいけど」
「え!?」
「迫田のせいなんだから、ハッキリした態度を取ればいい。ヘラヘラ笑ってるから誤解されるんだよ」
私も悪い。
それはわかってる。
でも、どうしていいかわからなかった。
日野さんのおかげで、何かが変わる気がした。
私は迫田なんて好きじゃない。
迫田のえこひいきが迷惑なんだから、やめてもらえるように言うしかない。