ただただ君が好きでした
―コンコン
「前髪?」
扉の向こうから聞こえた声は、マナ先輩の低い声だった。
「合言葉をどうぞ。前髪?」
「あ!前髪パッツン!ですか!」
―ガラガラ
「正解」
優しく微笑みながらゆっくりと扉が開く。
キョロキョロと見回した後、マナ先輩は私を中へ入れた。
「メモ、よく見つけられたな」
「最初、全然気付かなくて」
「昼休みは、あそこ結構人が通るんだよ。だから、変更した」
いろんなことを考えてくれて、マナ先輩は本当に優しい。
「ありがとうございます」
「いやいや。ここ、穴場なんだよ。昼休みは」
「そうなんですか。西館は3年生しか近付けない雰囲気があって」
「鍵も閉まるんだよ。イケない部屋だろ?」
ニヤリと笑ったマナ先輩を見て、胸がザワついた。
誰かと、この部屋に来たことがあるのかな。
彼女とか。