ただただ君が好きでした

ジャリ ジャリという音が心地良い。

静かで誰もいないその場所は、私の気持ちを安心させてくれた。


「はぁ」

とため息をつくと、視線の先に緑のスニーカーが見えた。


誰か、いる?


一歩、二歩と進み、しゃがみ込む男の人が目に入る。


音楽を聴きながら寝ているみたい。

片足だけ伸ばして、もう片方の足は立てて、そこに顔を乗せていた。

茶色い髪はクセっ毛で、うちで子供の頃に飼っていた犬を思い出した。


制服のズボンに、白のトレーナーを着ていた。

きっと、3年生の不良だ。



気付かれる前に逃げよう、と思った途端、その人が顔を上げた。


目が合って、数秒動けなかった。

なんというか…夕日のせいかもしれないけど、とてもキラキラした輝いた瞳をしていたから。

それと、今にも泣き出してしまうんじゃないかっていう表情にも見えた。




< 5 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop