ただただ君が好きでした
「マナ先輩は、お父さんと会えるんですか」
「ん?時々会うけど、母さんはそれが嫌みたい。大人の事情がいろいろあるみたいだから、できるだけ会わないようにしてる」
「会いたいのに、会えないんですか」
「そんなのオハナに比べたらどうってことない。オハナは大好きなお母さんに会いたくても会えないんだから。そんな重い悲しみを抱えてるのに、どうしてお前の笑顔ってそんなにも人を元気にするんだろ」
美術室の机に腰掛けたマナ先輩は、右手を伸ばして私の頭に触れた。
首を傾けたその優しい表情が、また私をドキドキさせる。
「元気にしてくれんだよ。オハナの笑顔が」
「私がマナ先輩を?」
「ああ、辛いはずのオハナの存在が俺の元気の源になってる。俺は、オハナの笑顔を守る義務があるって思う」
ものすごく嬉しいことを言ってくれてるのに、頭に触れた手にドキドキしすぎて、頭の中がめちゃくちゃになってる。
「そ、そんなことないです。マナ先輩が私の元気の源なんです」
「俺?負のオーラしかないけどな、俺って」
「そんなことないです!ほんとですっ!!私、マナ先輩に会ってから毎日幸せだし、頑張ろうって思うし、それに、それに・・・・・・」
勢い余って、余計なことを言ってしまいそうだったので、気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いて、天井を見た。
「ふふ。ありがとな」
また手が伸びてきて、私の前髪に触れた。
「俺が、もっと人気者になれる前髪にしてやる」
前髪をグっと引っ張られる。
近い。
超、近い。