ただただ君が好きでした
新たな私
ー新たな私ー
『誰に切ってもらったの?』
『いつの間に切ったの?』
5限目、桃香たちにからかわれながら授業を受けた。
前髪を切り、見える世界がカラリと変わった。
と同時に、気持ちも大きく変わった。
物理的に見える世界が変わったことで気付く。
今まで何かと私を守ってくれていた前髪の存在。
ほんの少しの視野の変化だけど、前髪がなくなったことで、堂々としていられる気がした。
ニヤつきそうになるのを我慢しながら部室へと向かう。
「なに、その髪っ!」
入口近くで着替えていた日野さんが私の前髪に気付き、吹き出す。
「へへ。おかしい?」
「いや、似合ってんじゃない?すごく子供に見えるけど」
よしよし、狙い通りだ。
「中学生に見える」
「マジ~」
その会話を遠くで聞いていた1年の数人が笑ってくれているのが見えた。
冷たい笑いではないと感じた。