ただただ君が好きでした

それからしばらく先輩に会えない日々が続いた。


私はマナ先輩のことを何も知らなかった。

前髪を切ってから1週間後の学校の帰り道のことだった。

部活がなかったのでいつもより早く帰っていた。
見てしまったんだ。
見たくないものを。

駅前のドーナツ屋さんでとても綺麗な女性と話をしていた、マナ先輩。

マナ先輩は制服だったけど、相手の女性は私服だったのでとても大人っぽく見えた。
私の知らない世界の人なんだって思った。


勝手に、知ってる気になっていたマナ先輩。

私は、まだ何も知らないし、これからも知ることはできない。

マナ先輩は、何を考えていて、誰を愛していて、どんな風に生きているんだろう。


好きになるのが早すぎた。

こんなにも好きになってから、気付くなんて。


マナ先輩がドーナツ屋さんで話していた人は誰?

彼女ですか?

人気者のマナ先輩だけど、彼女の噂は聞いたことがなかった。

穏やかな笑顔をしていたマナ先輩。

私の知らない顔をしていた。




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