ただただ君が好きでした
「え?オハナ?どこのおっさんに声かけられたのかと思った。風邪?」
「いえ、違います。朝から声出してなかったから」
「鳥でも犬でも虫でもいいから、話しかけときゃいいんだよ!」
朝日が目に入ったマナ先輩は、まぶしそうに目を細めた。
「こんな堂々と俺と話してていいの?テニス部の先輩に見られたらまたいびられんじゃないの?」
「あっ!本当ですね。でも、でも……」
「ん?何?何かあったのか?」
誰に見られてもいいと思った。
この幸せな時間がずっと続いて欲しかった。
「ずっと、話したいなって思ってて。でも、なかなか会えなくて」
「部活、辛いの?」
そうじゃないの。
ただ、マナ先輩が好きなんだよ。
言えないけど、心の中でそう叫ぶ。
「マナ先輩のおかげで、少しましになったんです。前髪のおかげかな?先輩達が優しくなった気がします」
「だろぉ?俺が言うのもあれだけど、男受けいねぇからな。ハッハハハ」
「ひどいっ!!」
「ま~、俺は好きだけどね」
ひとつひとつの言葉に反応してしまう。
その言葉だけで、十分です。
他に好きな人がいてもいい。
彼女がいてもいい。
マナ先輩とこんな風に話せるだけで幸せ。