ただただ君が好きでした

「しかし、迫田のひいきは、最悪だな。1回ちょっとテニス部覗きに行ったけど、ハナハナってうるさかった」

「え?来てくれたんですか?」

「連れが、テニス部かわいい子いるから見に行きたいっていうから、俺もついていっただけだけど」

マナ先輩も、普通の男の人だもんね。

かわいい子には興味もあるだろうし、そりゃ……


「なんだよ。別に俺はどうでも良かったんだよ」

「わかってます!!」

って、何、今のやりとり。
なんだか、ちょっと彼氏彼女っぽくなかった??


「マナ先輩、いつもこの時間ですか?」

「い~や。いつも遅刻かな。はは。今日は、早く目が覚めた。朝飯もなかったし、コンビニでパン買って、食べながら来た」

「朝食なかったってどういう……」

「再婚すんのかな。いいよって言ったら旅行に行った。おふくろにも人生があって、それは理解してんだけど」


寂しいはずなのに、笑ったマナ先輩の顔がまぶしかった。

「じゃあ、今度一緒に朝ごはんでも食べません?体育館の裏で」

自然に口から出た言葉だった。積極的過ぎたかなと後悔しそうになったけど、笑顔で答えてくれた。


「お!それナイス!」

「朝からマナ先輩に会えると1日頑張れます」

スラスラと恥ずかしいことが言えてしまう。

マナ先輩の笑顔があまりにも寂しそうだったから。

知って欲しい。
あなたの存在がどれほど人を幸せにしているのかってこと。


< 63 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop