ただただ君が好きでした

「俺に隠し事はだめだと思うよ~、ハナちゃん」

「ほんとに何もないです!3年生と付き合うとかありえるわけないじゃないですか」

「ふ~ん、そっか。いちおう顧問として、大事な生徒のことは知っておきたくて」


肩に触れた手を離して欲しくて、少し体を横に向けた。

その時に、気付く。

部室のドアが閉まっていること。
鍵がかかっていること。


「ハナ、俺のことそんなに避けなくてもいいだろ」

「ちょっと、もう練習あるんで行きます」

サコタを避けて、出ようとした時、抱きしめられた。

ちょっと、ありえないんだけど。

意識が遠のく感じで、夢なのかなって思う感覚。

人生で男性に抱きしめられるとか初めてだし、なんでこんなヤツに。

すぐに振りほどくことができたけど、頭の中には怒りと共に嫌な記憶がよみがえっていた。

私が男嫌いになった原因。
小学校の時の塾の先生のこと。

部室を飛び出した。

「うあぁぁ」


変な声を出しながら走って部活に向かった。

その途中に、聞こえた声。

「気合入れていこーぜ」


涙が溢れた。


大好きな大好きなマナ先輩の声が聞こえた。


幻聴かもしれない。

本当に聞こえたのかもしれない。

ただ、ホッとして涙が溢れた。


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