ただただ君が好きでした
体育館では、3年生とバスケ部との試合が始まっていて、女子の声援が聞こえた。
開いた扉の隙間から見えたマナ先輩。
ジャージを脱いだマナ先輩は、白いTシャツに赤いハーフパンツ姿で。
嬉しそうな笑顔で、ボールを追っていた。
マナ先輩、今夜電話してもいいですか。
今日の部活だけは笑って頑張るから、甘えてもいいですか。
2年の先輩は、休憩と言って、バスケ部の試合を見に行っていた。
私も見たかったけど、我慢するしかない。
それに、みんなの人気者のマナ先輩を見るのはちょっぴり切ない。
桃香は、大好きな山城先輩の姿、ちゃんと見てるかな。
サコタは練習に来なかった。
私が、今日の出来事を高校側に話したら、どうなるかわかってんのかな。
相当な弱味を握ってしまった私。
アイツ、絶対許さない。
その日、苦手だったサーブが何回か入った。
スピンもかかっていて、日野さんに褒められた。
やっぱりテニスは好きだ。
ここで逃げるなんてイヤ。
私は、遠くから聞こえる黄色い声援を感じながら、サーブの練習をした。
試合結果は、先輩達が話しているのを聞いて知った。
山城先輩と神野先輩のふたりでバスケ部1、2年チームに逆転勝ちした、らしい。
かっこよかった~って言ってるのを聞いて、優越感も生まれた。
みんなは知らない。
私だけに見せてくれる顔がある。
マナ先輩、どうしようもなく、大好きです。