ただただ君が好きでした
叶うわけない恋をしちゃった私と桃香だけど、この恋は宝物だって思うね。
「テニス部に入りたいって気持ち、実はまだあるんだよね。部活やってないと、青春してるって気がしなくてさ。何かに一生懸命になりたい。そうじゃないと、山城先輩のバスケ愛も理解できないような気がする」
真剣な横顔を見つめていると、桃香がテニス部にいたらどんなに気持ちが楽になるだろう、と考えてしまう。
「でも、一番の理由は、ハナちゃんと一緒にテニスしたいからなんだけどさ」
と、照れ臭そうに言った桃香は、足早に歩き出す。
「え~!桃香、私のこと好きなんだ~!」
「うるさいうるさい!」
桃香をからかいながら歩いていると、前の方に日野さんの姿があった。
短いショートカットで少しくせのある茶色っぽい髪が、他の誰とも似ていなくて、すぐに日野さんだとわかる。
「日野さんって知ってる?」
私が桃香に尋ねると、キョトンとした顔で振り向いた。
「日野っち?」
桃香の口から日野っちという聞きなれないあだ名が飛び出して、今度は私がキョトンとした。
「中学一緒だよ!一匹狼みたいにしてるけど、熱くて、おもしろいんだよ!もしかして、テニス部!?一緒だったんだ~!」
「日野さんと友達なの?今の私にとって、日野さんが唯一のテニス部の友達なんだよ」
興奮気味に話していると、日野さんが振り向いた。
「あんたら、声でかい。人の名前、大声で何度も何度も」
眉間にしわを寄せた日野さんは、仕方がないなぁという表情で私達の方へと歩いてくる。