ただただ君が好きでした
ライトを浴びたマナ先輩の横顔は本当に素敵だった。
みんなの人気者のマナ先輩が今、私だけのものな気がした。
「その子も結婚反対してるのかな」
私はその女の子の情報が知りたかった。
かわいいのかな。
本心を隠して、質問を続ける。
「お父さんとふたりの暮らしはキツいみたいでさ。その子は再婚して欲しいんだと思う。俺の母親とも仲良くなってるしな。そりゃ、中3で父親とふたりって大変だよな」
そう言った後、ゆっくりと私の方を見た。
その瞳がとても優しく感じた。
「お前も、辛かったな。家ってやっぱり母親がいなきゃ回らないよ。父親がいなくなっても経済的には大変だけど、生活自体はそんなに変わらないもん。オハナ、頑張ってるな」
誰も言ってくれなかった言葉だった。
ずっと思ってた。
お母さんがいなくなるってどういうことなのか。
寂しいとかそんなのは当たり前だけど、家事全般がのしかかってくるストレス。
そこには誰も触れてくれなかった。