ただただ君が好きでした
「オハナは、お父さんに再婚して欲しい?」
「わかんない。マナ先輩の言ってくれたみたいに、やっぱり家にお母さんがいないっていうのは大変だけど、気を使う生活をあと何年するんだろうって思うと、どこかに逃げたくなることがある」
大きく息を吐く音がした。
伸びてくる優しい手。
私の頭に触れた。
「俺はわかるよ。その気持ち。逃げたくなるよな。今のままも辛いけど、変わってしまうことも怖い」
優しく撫でられた私は、溢れた涙を止めることができなかった。
子供のように泣いた。
お父さんの前では泣けなかった。
しっかりしなきゃって思ってた。
平気なフリするのがいつの間にか得意になっていた。
「お母さんが……いてくれたらって、毎日毎日……考えちゃう」
「つ~か、オハナひとりで頑張りすぎ。もっと誰かに頼っていいんだよ」
抱き寄せられた私の体は、マナ先輩の腕の中だった。
火照った頬が熱い。
一瞬頭によぎった今日の出来事。
大嫌いなアイツにも抱きしめられた。
どうしてだろう、全然違う。
1日に二回も抱きしめられるなんて、すごい1日。