ただただ君が好きでした
「なぁ、ちょっとええか?」
部活の帰り道、後ろから話しかけられた。
「はい?」
どこかで見たことのある先輩だった。
「テニス部やんな?テニス部のハナって子知らん?」
わ、私?
「え、私です」
「お~!あんたか。すぐ見つかった!良かった。ちょっとええか?」
聞きなれない関西弁と馴れ馴れしい話し方に、ドキドキしていると
日野さんと桃香が私に耳打ちした。
「3年の先輩!」
どこかで見たことがあると思ったのは、マナ先輩のバスケの試合だったと思い出した。
赤っぽい髪が印象的。
「ごめんごめん、いきなりで。びびらしたな。俺、3年の柳崎怜次や。ハナちゃん、ちょっとだけいい?」
私は、ふたりに先に帰ってもらい、柳崎先輩と土手を下りた。
「あの、私に何でしょう」
「マナトのことやけど、心配せんでもアイツは元気にしてるから」
「神野先輩と連絡取ってるんですか。今、どこにいるんですか」
私は、柳崎先輩の腕を掴んでいた。
「ははは。めっちゃ真剣やん。ハナちゃん、アイツのこと好きなんか」
「いえ、そういうのではないんですけど。心配で心配で」
「マナトも心配してた。ハナちゃんが元気でやってるか見てきてくれって頼まれてな。でも、もう会うつもりはないって言ってる」
嬉しいことと悲しいことが両方耳に入ってくる。
もう会わないなんて言わないで。