ドルチェ~悪戯な音色に魅せられて~
「……ねぇ」
「はい?」
呼びかけられて浮いた私の顎を、隼人さんがスッと掬い上げる。
「そう思うなら責任とってね」
「え?」
気のせいかな……?
途端に雰囲気が変わったような、爽やかな笑顔に見えるのに何か引っかかるような。
そうして隼人さんは突然、また私をお姫様抱っこした。
「きゃっ!?じ、自分で歩けますから!」
「こっちのが早いし」
「やっ、下ろしてくださ……」
「俺もさっさと仕事に戻りたいんだよね」
「っ!」
そう言われると、黙って彼に掴まるしかなくなってしまう。
細く見えるのに力強い腕に抱かれ、厚い胸に頭を預ける。
私の体中はドキドキと高鳴っていた。
恥ずかしさに涙をこらえて俯いていると、隼人さんの歩調に揺られてふわふわしてきた。
「なんだろ。目が回る……」
「乗り物酔い?」
「えっ、ふふ。隼人さんは乗り物なんですか?」
「ツンデレラ姫の馬車?」
「ツンデレじゃないですっ!」
顔を真っ赤にして唇を噛む私を、クスリと笑う。
やがて下ろされたのは、ふかふかのソファーの上。
顔を上げると、パーティーでもするのかと思うほど広すぎる部屋。
大きな窓ガラス越しの、夜景の中に浮かんでいるような、とんでもない光景に息を呑んだ。
「なにこの部屋……」
「あぁ、昂の親父はこのホテルグループの社長サンだから」
「えっ!?」
「ある程度は融通利くの」
「えぇ、はぁ。私こんな素敵なところじゃ眠れないかも。やっぱり帰ります」
「あっ、おい!?」
立ち上がるとズキンと痛みが走り、そのせいか足がもつれる。
隼人さんは、ひょこひょこ歩く私の腕を掴み引き止めた。
「危ねぇ。……つーかお前、何飲んだ?」
「え?」
「昂に何てオーダーしたの?」
「えっと確か恵理が、……私が素直になれるようなやつって。でも甘くて美味しかったですよ?」
「んー、コーヒーみたいな?」
「はい!」
「ルシアンか」
「?……あと、なんとかかんとかダーク」
「へぇ」
隼人さんはよろめく私の体を抱き支えながら、ニヤリと笑って試すように耳元で囁いた。
「それで、素直になれた?」
「っ、私はそんなつもりじゃっ!……とにかくもう帰ります」
バカにしてるっ、優しい人だと思ったのに。
隼人さんの腕を振り払いドアまで辿り着くが、いつの間にか追いついた彼に壁際へ追いやられた。
「!?なにするん……」
あんまり近い距離に驚いて押し返そうと出した手を、彼はいとも簡単に片手で私の両手首を取る。
そのまま壁に固定されてしまい、大きな掌が私の頬を力強く包んだ。
「このまま逃がすと思ってんの?」
「なっ、んんっ!?」
ーーーっ、
「……は、ぁ」
それは多分一瞬の出来事。
誰かにこんな強引に唇を合わせられたのは初めてで、体の中がゾクリと奮えた。
彼は私に嫌がる隙も与えてくれず、私の空気を奪い取るかのように深く口づけた。
甘い吐息を吐き出して、放心しながら見つめているとドアが三回ほどノックされる。
それから音のない動作に私が夢から引き戻されることはなく……。
部屋には二杯のカクテルが届いていた。
「はい?」
呼びかけられて浮いた私の顎を、隼人さんがスッと掬い上げる。
「そう思うなら責任とってね」
「え?」
気のせいかな……?
途端に雰囲気が変わったような、爽やかな笑顔に見えるのに何か引っかかるような。
そうして隼人さんは突然、また私をお姫様抱っこした。
「きゃっ!?じ、自分で歩けますから!」
「こっちのが早いし」
「やっ、下ろしてくださ……」
「俺もさっさと仕事に戻りたいんだよね」
「っ!」
そう言われると、黙って彼に掴まるしかなくなってしまう。
細く見えるのに力強い腕に抱かれ、厚い胸に頭を預ける。
私の体中はドキドキと高鳴っていた。
恥ずかしさに涙をこらえて俯いていると、隼人さんの歩調に揺られてふわふわしてきた。
「なんだろ。目が回る……」
「乗り物酔い?」
「えっ、ふふ。隼人さんは乗り物なんですか?」
「ツンデレラ姫の馬車?」
「ツンデレじゃないですっ!」
顔を真っ赤にして唇を噛む私を、クスリと笑う。
やがて下ろされたのは、ふかふかのソファーの上。
顔を上げると、パーティーでもするのかと思うほど広すぎる部屋。
大きな窓ガラス越しの、夜景の中に浮かんでいるような、とんでもない光景に息を呑んだ。
「なにこの部屋……」
「あぁ、昂の親父はこのホテルグループの社長サンだから」
「えっ!?」
「ある程度は融通利くの」
「えぇ、はぁ。私こんな素敵なところじゃ眠れないかも。やっぱり帰ります」
「あっ、おい!?」
立ち上がるとズキンと痛みが走り、そのせいか足がもつれる。
隼人さんは、ひょこひょこ歩く私の腕を掴み引き止めた。
「危ねぇ。……つーかお前、何飲んだ?」
「え?」
「昂に何てオーダーしたの?」
「えっと確か恵理が、……私が素直になれるようなやつって。でも甘くて美味しかったですよ?」
「んー、コーヒーみたいな?」
「はい!」
「ルシアンか」
「?……あと、なんとかかんとかダーク」
「へぇ」
隼人さんはよろめく私の体を抱き支えながら、ニヤリと笑って試すように耳元で囁いた。
「それで、素直になれた?」
「っ、私はそんなつもりじゃっ!……とにかくもう帰ります」
バカにしてるっ、優しい人だと思ったのに。
隼人さんの腕を振り払いドアまで辿り着くが、いつの間にか追いついた彼に壁際へ追いやられた。
「!?なにするん……」
あんまり近い距離に驚いて押し返そうと出した手を、彼はいとも簡単に片手で私の両手首を取る。
そのまま壁に固定されてしまい、大きな掌が私の頬を力強く包んだ。
「このまま逃がすと思ってんの?」
「なっ、んんっ!?」
ーーーっ、
「……は、ぁ」
それは多分一瞬の出来事。
誰かにこんな強引に唇を合わせられたのは初めてで、体の中がゾクリと奮えた。
彼は私に嫌がる隙も与えてくれず、私の空気を奪い取るかのように深く口づけた。
甘い吐息を吐き出して、放心しながら見つめているとドアが三回ほどノックされる。
それから音のない動作に私が夢から引き戻されることはなく……。
部屋には二杯のカクテルが届いていた。