◇ヌードで魅せて◇


「あたしは…この写真に救われたんです。この写真に出会えたから…また前に進もうって思えた、また笑おうって思えた…すごく大切な写真です」


震える声で、自分の思いをゆっくりと言葉にして。

差し出されたその写真を、震える手でしっかりと掴んだ。


もう一度見たいってずっと思ってた。

これが今、あたしの手の中にあることが嬉しくて涙が滲んでくる。


「俺は、おまえに救われたよ」

「えっ…」


反射的に顔を上げると、瞳に溜まった涙がポロポロとこぼれた。


「あの日、おまえがこの写真を見て泣いてくれたから…俺の中で兄貴の死を受け止めることが出来た。
おまえのおかげで……俺は、泣くことが出来た」


次の瞬間、先輩に腕を引かれて抱き締められていた。


弱々しく震える声に、胸がギュッと締め詰められて。

あたしを抱き締めるその大きな身体が微かに震えているのを感じて、涙が溢れて止まらなかった。


先輩が、今も泣いているような気がして。

その悲しみを全部受け止めてあげられたらいいのにと、先輩の背中に腕を回して抱き締め返す。


「あのときから…ずっと、葵のことが気になってた」


あたしの耳元で。

今までで、一番優しい声がした。


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