◇ヌードで魅せて◇
「初めは、何でもいいから…キッカケが欲しかったんだ」
抱き締めるその手は、緩むことなく。
耳元でゆっくりと語りだす先輩の声は優しいまま。
「俺のこと、嫌いでもいいから…側にいて欲しかった」
「それって……」
そんなこと言われたら、勘違いしちゃう。
本当は好きになっても良かったんだって。
「でも、先輩…面倒だって」
好きになられたら面倒くさいって、確かにそう言ったのを聞いてる。
「面倒だよ…」
フッと笑った先輩が、抱き締めていた手をゆっくりと緩めてから。
あたしの顔を覗き込んできて。
「面倒なのは、俺のほう」
「えっ…」
「もし、葵が俺を好きになったら……自分を抑える自信なんてないから」
揺れる瞳からは、先輩の不安な気持ち伝わってくる。
「好きな女と…二人きりとか、無理」
そう言って困ったように笑う先輩に、キュンと胸が疼いた。
「…好きだとか、迷惑?」
ねぇ、先輩…どうしよう。
胸が苦しいよ。