◇ヌードで魅せて◇
首を左右に振る。
それが精一杯だった。
声を出したら、涙までどんどん溢れちゃいそうだった。
迷惑なわけない。
あたしだって、もうどうしようもないくらい先輩が好きなんだから……
「で、でも…香織さんは……」
「だから香織は…」
「そうじゃなくて。先輩は香織さんのこと……好き、なんでしょ?」
自分の言葉に傷つき、きっと引きつった情けない顔してるだろう。
「先輩…すごく優しい顔してた。愛しそうに…香織さんのことを見つめてた」
あたしには、一度だって見せたことのない顔をしていたじゃない。
だから、あたしには敵わないって…諦めるしかないって……
「同情だよ」
だけど先輩は軽蔑するような冷たい瞳。
「現実を受け入れられない香織を、可哀想だと思ってる」
だから…気が済むまで、兄貴の代わりをするつもりだった…って。
そういう先輩は今にも泣き出しそうで。
その冷たい瞳は先輩自身に向けられているように見えた。
「それしか思いつかなかった。だから、香織が求めれば抱き締めてやったし、キスもした。俺は同情だけで…香織を抱いた。だけど……」
先輩の表情からは、“後悔”の色が見えて。
「もう、終わりにする」
先輩も、ずっとずっと苦しかったんだって思えてならなかった。