◇ヌードで魅せて◇
同じ高校だと知ったのはそれからしばらくたってからだった。
吉良先輩の名前をどこかで聞くこともあったけれど、本人を見たことはなかったし。
特に興味もなかった。
だけど、どうしてもあの写真を忘れることが出来なくて。
写真展が終わるまで何度も足を運んでしまうほどに気に入っていた。
先輩の写真を見たことを誰にも言わずに。
誰にも教えたくなくて。
自分だけの大切な“宝物”の一枚になっていた。
顔も知らない先輩を勝手に想像して、自分の中で“理想の先輩”を作り上げる。
あんなに素敵な写真は撮れるんだから。
きっと本人も素敵な人だと決め付けて。
真面目な人だろう。
優しくて温かい人だろう。
だけどカメラを構えると、一瞬で変わる真剣な瞳。
そんな先輩に勝手に好意を寄せて、勝手に盛り上がって。
妄想だけで、こんなにもドキドキしてる自分がいた。
でも、そんなのはあたしの勝手な妄想の中での彼であって。
実際はまったく違ったのだ。
いつも無表情で。
たまに見せる光のない瞳と、人を馬鹿にしたような態度。
いつもつまらなそうで。
いつも一人でいた。
想像とはまったく正反対の彼に。
ガタガタと音を立てて、“理想の先輩”が崩れていく。
自分勝手だと言われればそれまでだけど。
そんな先輩に嫌悪感さえも感じてしまった。
冷めた態度の先輩を見て、ありえない…なんて思ったり。
見下したような冷たい視線に、最低…なんて一人で非難したり。