◇ヌードで魅せて◇


「吉良先輩……?」


積み上げられた机や教材を掻き分けて、奥の窓際まで進んでいく。

窓から差し込まれた光で明るくなった先輩の隠れ家までたどり着いたけれど。


「あれ…?」


そこには先輩の姿は見当たらなかった。

珍しい…と思いながらも、あたしが知ってるのはここ何日かの先輩のことだけ。

この場所を知る前は、隣の暗室にいるって思ったいたくらいだ。


もしかしたら昨日の写真を現像してるのかもしれない。

開きっぱなしのパソコンを見て、そんなことを思う。


いつも先輩が座っているイスに腰を下ろして、目の前に広がる景色を見ていた。

ここから見えるあの海に、昨日は先輩と一緒に行ってきた。

結局撮っていたのは海と夕日の写真だけ。

あたしなんて眼中になくて、いてもいなくて同じだったかもしれないけど。

あの場所に一緒にいられただけで、なんだか幸せだった。


真剣で真っ直ぐな先輩の瞳。

少し色気も混じってて思わず見惚れてしまうような横顔を思い出してしまうと。

少し鼓動が速くなる。

カメラを構えたあの瞳に見つめられたい。

だけど、きっとあの瞳に見つめられたら…あたしは……


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