◇ヌードで魅せて◇
「……おまえさ」
はじめて間近で聞いた先輩の声は、思っていたよりもずっと低くて。
感情も何も感じられなくて、それだけで身震いしてしまうほど。
「…な、んですか?」
怯えたような声色。
怖くて逃げたいのに。
真っ直ぐにあたしを見下ろすその瞳からは逃げられない。
「おまえ、ヌードモデルになれ」
突然の言葉に。
ガツン、と殴られたような衝撃を感じて。
目を見開き、口は半開き、そのまま硬直してしまう。
「……今、なんて?」
「ヌードモデル」
「い、やややっ…むり、無理です!!」
慌てて拒否する言葉を発しながら、思わず顔を上げてしまった。
思った以上に近い距離。
薄暗い部屋の中。
無表情だと思っていた先輩の口角が微かに上がったような気がした。
「俺が嫌いなんだろ?」
「へ?」
怯えたままの表情で先輩を見遣るけど。
目を合わせる度胸なんてなくて、左右に逃げていくあたしの視線。
恐怖と緊張と驚きに、呼吸が浅くなっているのか、すごく息苦しかった。
「モデルの条件は一つ」
いやいや、まだやるなんて一言も言ってない。
しかも、ヌード…って。
「俺を好きにならないこと」