◇ヌードで魅せて◇
わかってる。
この二人は付き合ってるんだって。
先輩にとってあの人が愛しい人なんだって。
あたしはただの後輩で、ただ少しからかわれただけで……
暗室の中で繰り広げられているであろう光景を勝手に妄想して傷つく。
馬鹿みたい。
こんなに苦しんだって仕方ないのに。
いかがわしい声に、頭がガンガンする。
何が行われているのか、わからないほど初心でもない。
だけど、それはあたしの昔の記憶を甦らせるだけの行為。
「葵! 行くよ!!」
真っ青になったあたしを見て、美帆が無理やり腕を掴んで歩き出す。
上手く動かない足のせいで、引きずられるようにその場を離れていく。
その後は無言で美術室へと向った。
「……葵」
「あ、早くしないと前夜祭始まっちゃうよ!」
美帆の心配する声を振り切るように、拍子抜けするようなあたしの声が美術室に響いた。
何かを聞かれても、何を答えたらいいのかわからなかった。
だって、あたしのただの憧れ。
ただの片思いだもん。
相手に彼女がいてただ傷ついただけ、そんな子、この学校にだってたくさんいる。