After -deconstruction "God Ideology"



 2人はまだマジックヴィレッジに戻った.

水神はすぐ自ら星月様の部屋へなだれ込み,雷神の姿形を思い出したということを伝えようとした.

しかしその扉の向こうにはいつものように暗くよどんだ青い壁が広がっていてそれだけだった.

しかし,代わりにすぐ後ろの方から臭いでも嗅ぎつけてきたようにすらっとした下女がそこにいた.

下女はまたいつもの様に冷静で淡々と語りだした.

「水様,ディベルディンダにて雷神様を発見なされたようです.

 現在風様が一時的に戻られております.

 お急ぎください.」

「ああ,今雷神の姿を思い出したから,星月様にそのことをお伝えしようと思ってたんだよ.」

水神はとりあえずここにいる意味を話そうとした.

そうしないと何かやるせない気がしたからだ.

「分かっています.

 お急ぎください.」

下女は繰り返しそう言うだけだった.

水神はもう下女を説得することが無理だと分かった.

コロ村で思い出した経験は再び風化されてしまった.

水神はとぼとぼと星月様の部屋を出て行った.

「風様は待っておられます.

 お急ぎください.」

 水神は自分の部屋に戻ることさえ許されず,マジックヴィレッジの入口へと右に左に揺れながら歩いていた.

お急ぎください,と淡々と文字列を流していた下女はもうそこにはいなかった.

水神は自分のことが信頼されていると信頼されていると考えられないこともなかったが,そうは思えなかった.
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