After -deconstruction "God Ideology"



 (私,どうしよう…?)

マリーは誰にも聞かれないように心の中でつぶやいていた.

「行ってこい.

 ちょうどいい.ジラスに世界を見せてやらないとな.」

しかし,マリーの悩んでいる顔は明らかだった.

ソラガスもそれを見捨てておけなかった.

マリーはそれを聞くと,喜ぶに喜べない顔をして,頷いた.

ジラスは,というと,父親の最後の言葉にびくびくしていた.

というより,どきどきなのかもしれない.

まるで森に行くときのような気分だった.


 楽しい旅行ではなく,しかも急ぎだったので,マリーは大慌てで荷物をまとめて,ソラガスのために日持ちのする食べ物を作ったりしていた.

荷物はあっという間にできていた.

ジラスはたいした荷物もなく,いつものように何もしていなかった.

「あんた,大丈夫?

 これからかなり遠いところに行くのよ.

 しっかり準備しておかないとダメよ.」

マリーはいつにも増して早口でジラスを追い立てて,また準備に戻っていた.

「って母さん,おれ何をすればいいんだよ.」

「そんなの自分で考えなさいよ.

 明日の朝だよ,出発は!」

マリーはそういうとさっさと自分の仕事に戻ってしまった.

ジラスもとりあえず自分の部屋に戻って,ない荷物を整理していた.

でもやっぱりない荷物を整理することはできなかった.

ジラスはもう,手ぶらでいいや,と思っていた.
< 21 / 295 >

この作品をシェア

pagetop