After -deconstruction "God Ideology"



 もはや水神ではなくなってしまったカハシは,小刻みに震えながら絶告の部屋を後ずさりしていた.

「そ,そうだよね.

 ど,どうせ僕なんか…」

声にはなったものの,部屋の中にいるどの神一人さえも気づかなかった.

「そう.

 雷神をつかまえる時だってそうだったんだ.

 ミナトシティでの戦いの時だってそうだったんだ.

 この世の中というのは失敗したら,消えないといけないんだ…きっとみんながそう思っている…」

カハシは金縛りから急に解けたように立ち上がった.

「大体昔からそうだったんだ…どうして僕はここにいるんだろう…

絶告の部屋に背を向けて遠ざかっていた.

「あの時,あのときにマホウビトとして殺されていればこんな辛い目に遭うこともなかったんだ.」
★マホウビト:魔法を使うことが出来る人が元の意味.ここではその疑いのある人までを含める差別的表現.

カハシは光の差している庭園に来ていた.

庭園は明るかった.

雲のないマジックヴィレッジでは当たり前のことだった.

庭園の植物達にはもちろんのこと,まさに今,水が与えられていた.

「おじいちゃんは命が一番大切だと言ってはいたけど…マホウビト裁判で殺されてしまったし…僕のことを考えてくれているような人はもうこの世の中にはいないはず….
★おじいちゃん(=エジンソン老人,人名):マホウビトのなかでも大物.彼は地上にいるマホウビトを保護していた.カハシ(水神)を過去には保護していた.闇軍団との関係はなかったが,光軍団とも関係がなかったと思われる.フィリティカル国の政策によって処刑されてしまった.
★マホウビト裁判:一連のフリティカル国のマホウビト弾圧政策のこと.

 死んだらどうなるのかな.

 雲の上にでも行くのかな.

 …でもここは雲の上なんだよね.

 …ということは,死んでも大して意味がないということかな.」
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