After -deconstruction "God Ideology"



 静寂をどこかへ押しやりたいかのようにネコハクの話は続く.

「はじめは魔法だけを守っていればよかった.

 他の国と交流していくにつれて,魔法に頼らないといけない暮らし方は格好悪く見えた.

 私の親友のトラムロとタバトムも魔法の力を棄てて,武器の力をとった.

 でも,格好悪かったのは魔法だけではなかった.

 イワイウソオが攻め入った段階でわかったことだけど,私達は人間ではなかった.

 リルラー族(※)だった.
★リルラー族:先祖をリルラーだとしている集団.ムウガ島にのみ住んでいるといわれている.リルラー族は独特の(マジックヴィレッジに関係しない)魔法を扱う.リルラーとはゼリー状のプルプルした弱い魔物である.どうしてそんなものから人間に進化したかは謎である.なお,ネコハクのようにリルラー族を誇りに持っている人はあまりいない.

 私はリルラー族の子孫,ネコハク.

 リルラー族は一段低く見られた.

 リルラー族の勇士が何人も犠牲になって,トラムロとタバトムも犠牲になった.

 それでも何とかイワイウソオを殺したし,ドラ王連邦を開放したけど,それでも偏見だけは残った.

 新婚旅行で来る人間様はサルではないリルラーから進化したリルラー族を見に,召使がいるところとしてきているだけだ.

 私の使命はリルラーを守ることだ.」

ユテーラが食事を持ってやってきた.

「また話をしているの?」

「いや,いいんです.

 僕が聞いたんです.

 …それでもなお,幸せと言えるのなら,それはよかったでしょう.」

「ところで,お話の途中だとは思いますが,さめないうちに食事を摂られてはどうですか.

 ネコハク兄さんは,何かやっていると食事すら忘れてしまうのですから,とても心配なんです.」

カハシはユテーラを見た.

ユテーラの持ってきた食事は,色はあまりなかったが,空かせた腹には気にせずにはいられない匂いがした.

そしてあんなことを言っている割には裏のない笑みをしていた.

…満足そうだった.

カハシもそれに引きつられて,落ち着いた気分になった.
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