After -deconstruction "God Ideology"



 ヤルサの演説に対して,多くの者が賛同し,場内は熱くなった.

裁判官は賑やかになりすぎた廷内を静め,黙っていたマホウビトに問いかけた.

「フィリティカルのヤルサ氏に対して何か反論はありますか?」

「罪のない人々が亡くなったことについては謝るしかありません.

 でも…」

「でも,なんだね?」

ヤルサを誰も止めることはできなかった.

「もう,マホウビトは存在していません.

 全員殺され…無に帰しました.

 もう人間に影響を与えることはありません.」

(ポストカミサマは,きっといい世界になるはずだからな.)

独立神の言葉に押されて,その声はいつになく力強かった.

ヤルサもさすがに少し顔が歪んだ.

「…ここで論じようとしているのはあの津波のことだ.

 われわれの仲間が死んだことについてだ.

 それにマホウビトがいなくなった事をどう証明するのだね.

 第一,お前はマホウビトだったのにかかわらず,無に帰していないではないか.」

ヤルサは策略家になっていた.

感情に任せて発言しているようであったが,言っていることは間違っていなかった.

三日間考えていただけのことはあった.

独立神の波動が男の中で弱くなっていく.
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