After -deconstruction "God Ideology"



 処刑場は魔法牢の中の小さな広場に設けられていた.

過去マホウビト裁判で有罪になったモノたちが処刑される場所である.

今までの処刑は秘密裏に行われていたため,多くの人間が実物を眼にすることはなかった.

ところが,「今回だけ」という条件つきでヤルサが処刑を公開することにした.

フリティカル国民だけではなく,世界中から大英断だったと讃える声がヤルサにひっきりなしに届いている.

ヤルサの人気は最近急上昇でスキャンダルやら昔の話などはもう誰もしていない.

会場には処刑の前日から盛り上がっていた人でいっぱいだった.

ヤルサが会場に姿を現しただけで,スタンディングオベーションをはじめる見物人もいた.

「みなさん,ありがとう.」

急に会場がおとなしくなった.

「この判決をどうすべきかについて,私達は世界各国の代表者と懇談をした.

 中には死刑をする事をためらう国もあった.

 私はその代表者にこう言った.

 「確かに人の命を奪うことは簡単に許されてはいけません.

 しかし,マホウビトが信用できないモノであり,我々の同胞がマホウビト同士の抗争に巻き込まれて多くを失ってしまった.

 そうである以上,彼が人間であるとするなら,人間を辞めて頂くより他ありません.

 しかも奴はあの津波に直接関与したのですからな.」

 その結果がご存知の通り,これから起こることに他ならない.

 我々はこれでマホウビトを封じることにまた一つ成功することになるのである!」

この演説は後々の不許の罪の演説として後生に語り継がれることになるほど,その場に居合わせた観客の心をつかんだ.
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