After -deconstruction "God Ideology"



 処刑が終わった後,お祭り騒ぎをしていたのは,フリティカルの市民だけだった.

そのフリティカルの市民でさえも,すぐに後の祭りといったようにおとなしくなってしまった.

フリティカルの最高指導者ヤルサはアーメルスを吸収すると宣言した.

シムとスーイアの闇軍団の策略によって親しくなっていただけで,それぞれの市民たちが親しいと思っていたわけではなかった.

それでも市民たちがいままで反乱を起こさなかったのは,マホウビトという共通の敵を立てたからだった.

マホウビトのいなくなった今,ヤルサの宣言を好意的に受け取るアーメルス市民は誰一人としていなかった.

両国は対立関係に戻ってしまった.

スーイアの術が完全に解けたのだ.


 あの裁判で最後のマホウビトが死刑になるまでの議事録が公開された.

各国代表が合意したのはマホウビトが消えれば,世界が安定するということだった.

彼が死刑になったのは彼というよりも彼の血が原因だった.

しかも,マホウビトが消えても,世界に平和が訪れることはなかった.

世界秩序はさらに大きく乱れた.


 それでもせめてもの救いがあるとすれば,この星がなくならなかったことだ.

神様は所詮その程度でしかなかったのだ.
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