After -deconstruction "God Ideology"
 すると何かのセンサーに反応したかのように,部屋のドアがそっと開いた.

栗色の長い髪と全身この部屋と同じ薄い水色の衣に包まれた女性が入ってきたのがわかった.

顔も犬連れの女性よりもずいぶん優しそうに見える.

怖さは全く感じられなかった.

そして自分も見たら,同じ色の衣を着けられているのがわかった.

「水様,お目が醒めましたでしょうか.」
★○様:属性神は名称ではなく,属性名+様で下女は呼ぶことになっている.だからカハシではなく,水様になっている.属性神同士は属性名で呼び合う事になっている.前回(27回)での「雷と生だ.」というのは,雷の神と生の神をさす事になる.

カハシはその言葉の意味はよくわかった.

しかし,水様とは何かよくわからなかった.

「ああ,まあ…ね.」

思わず応えてしまった.

するとその女性はちょっと笑って自己紹介をした.

「はじめまして.

 私は水様の回りのお世話をさせて頂く水様の下女です.」

「ちょっと待って.

 水様って何だい?

 僕にはカハシという名前があるんだ.」

カハシはよくわからなかった.

それに,自分の名前以外のもので呼ばれるのは嫌だった.

「もう,水様は水様なのよ.

 あなた様は皆から崇められる神になられたのです.」

「神?」

下女の変わらない表情に比べて,カハシは目をぱちくりさせて戸惑っていた.

「ちょっと待って.

 僕なんか神様なんかにふさわしくありません!

 父親は愛のない人殺し武器の工場長,母親は名の知らない水商売の女だし,僕なんかたいしたこともできないんだ.

格好もよくないし,動作だって鈍いし…」

カハシは今まで抱え込んでいたコンプレックスを言えるだけ言ってみた.
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