漆黒の白雪姫。【完】

1.






真っ赤な真っ赤な紅色のリンゴ。


月光に当てられ、艶やかなリンゴ。


そんなリンゴを何も置かれてないテーブルの上に置いた少女。


漆黒を連想させる黒の艶やかな髪をした少女は、真っ赤な唇を弧を描かした。


「まるで血のようね」


リンゴに皮肉を言った。


血でもこのリンゴの色は、静脈血のようなくすんだ赤でなく、動脈血のような鮮やかな赤だ。


「これで、やっと死ねる」


少女は、嬉しそうに目を細めた。


真っ赤なリンゴには毒を入れてあり、一口食べると毒は体全体に回る。


回りきるまでの時間は、わずか1分。


彼女の最高で最悪の毒は、彼女の体を蝕(むしば)んでいくのだ。


魔女、と人から呼ばれる彼女。


美しい上に、賢い。


彼女程美しい者は存在せず、彼女程賢い者も存在しない。


ゆえに彼女を利用する者は多くいた。


身近にいけば、彼女の両親、祖父母、従姉、叔父や叔母。


彼女の味方は誰もいなかった。


彼女は、毒入りのリンゴを手に取り、口元に持っていく。


小さな口を最大に開いて、リンゴをかじろうと、歯を立てようとした。


それはやろうとしただけで、出来なかった。



なぜなら、





「諏訪 白雪(すわ しらゆき)。あなたを殺しに来ました」








月を背に窓枠に座る灰色の綺麗な瞳をした殺人鬼がいたから。




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