封印の虹 Vivid army
特別施設内は気味が悪いくらいに全てが揃っていた。本やビリヤード、テレビもあって、仕事はしなくてよかった。ただ好きな時間に起きて、自由に過ごすという生活だった。

後で、ラストが絶滅したら処刑されると知ったのさ。まあ薄々気づいていたし、そうでもしないと犠牲になった上官たちが可哀想だと思って生き延びようとは思わなかった。

しかしある日、ピジョンという男が訪ねてきた。そいつは、松原が子供を産むのを止めればここから逃がすと言ってきた。
最初、冗談だろと思ったよ。まだ十七だっていうのに産むわけがないって普通考えるはずだ。

奴は本気で言っていたんだよ。信じてもらえないならと一週間外に出ることになった。

外はやっぱり荒れていたよ。一応学校だって言うのに煙草の箱やら燃えカスやら酒の瓶が散らかっている。真面目な生徒や大人しい生徒をいじめる奴らを見た時は一撃くらわせてやろうかと思ったよ。

将校の兵舎はもっとひどい。下士官が命がけで戦っているのに安全な場所で賭博している。掛けられていた綺麗な風景画は戦利品にされ、上品な白の壁がヤニで汚れていた。

周りは私を見てざわついた。まあ死刑囚が歩いていたらそうなるだろう。
ぶらぶらと歩いていると、松原を見つけた。軍服ではなくゆったりとしたワンピースを着ていた。

死刑囚と仲がいいなんて思われたら苦労するだろうから、松原と呼んだ。けど、向こうは恵理ちゃんと言ってくれたよ。

その後、松原の部屋に行って話すことになった。松原の部屋は他と比べると綺麗だったけど、少し煙草と酒の臭いが残っていた。松原は妊娠したことが分かってからやめたと話した。

これは、止めるのは難しそうだ……
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