封印の虹 Vivid army
「やっぱりこういう自然が多いところって好きだなあ」

背伸びをしながら愛恩が言った。

「昔はどんぐり拾って遊んでたなあ」

「私も!でも虫が出てきてお母さんに怒られた」

「あのときは本当に申し訳ないと思ってる」

あれ以来、私は怖くてどんぐりを拾うことが出来なくなった。

「実は、そこにどんぐりの木が植えられてるの」

「えっ!?ってことはどんぐりひろえるの!?」

「いや、ここじゃそこまで大きくなれないと思う」

植えた場所が悪くて、邪魔になるから大きくなる前に枝を切らなければいけない。

「どこかに植え直したら?」

「それは木が枯れちゃう」

可哀想なことをした。子孫を残すことができないのは植物にとって嫌なことだろう。自分の遺伝子を未来に残すことが出来ないんだから。

あの人たちは、生きた証を残せたのかな?一言でもいい、誰かがその人のことを語り継いでくれないのかな?
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