封印の虹 Vivid army
重い荷物を背負って玄関を出る。

「お世話になりました」

「どういたしまして。愛恩ちゃんいつも手伝ってくれたから助かったわ。ありがとう」

ここに来た時と違って、お母さんは元気が無くなっていた。

「お母さん」

「何?」


「いつもありがとう……」

なかなか言えなかったことが言えた。いつも、お母さんを名前のことで嫌っていた私は全然言っていなかった。

「桃心も……ありがとう。ごめんね、お母さんのせいでいじめられたりして……それでも、桃心は優しくしてくれたね」

「私、お母さんに優しくなんて出来ていなかったよ!いつもお母さんのせいにしてた!」

いつも、名前のせいに、お母さんがつけた名前のせいにしていた。

「今日、二人はここの皆を全力で守ってくれた。やっぱり、強くて優しい子たちだと思うよ」

そう言ってお母さんは、愛恩と私の頭をなでた。

「無事に帰ってきてね」

お母さんは泣いていた。

「うん!」

帰って来れるかは分からないけどそう答えた。なぜか、そうすれば生きて帰って来れる気がした。

そして、私たちは歩き始めた。後ろは振り返らなかった。

人が少ない夜の駅で電車を待った。何分か経って電車が来て、椅子に座る。窓を見ると明かりのついた家たちが見えた。
どんどん明かりは増えて行く。降りる駅に近づくにつれ、カラフルな看板、ネオンが増える。

電車を降りて、もう一度重たい荷物を背負う。自分の部屋に戻った頃にはもう十一時を過ぎていた。
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