封印の虹 Vivid army
「私の友達はね、軽巡洋艦に乗っていたの。そして、助からなかった。港で探した時、もうこの世にいないと言われて……絶望したわ」

討伐作戦の時も見た。港に来て、誰かの無事を確認する人たちを。無事に帰って来た人を泣きながら抱きしめる人、白い布を被せられた遺体のそばでただじっとしていた人、遺体も無くただ死んだということを告げられた人。

鸚緑さんもその一人だったんだ。

「事件のことが明らかになっていくほど、私は夜空を怨んだ。戦えない事くらい分かったはずなのに、しばらくしたらラストが落ち着いて、重巡洋艦は助かったのに……艦長でもない奴の言うことを聞く人たちにも腹が立ったわ」

鸚緑さんは服を握りしめ、俯きながら話す。

「その後の対応も、夜空の親が大将だったからと言って、夜空は三週間の自宅謹慎だけだった。その代わり、水雷艇を作った人と、水雷艇と軽巡洋艦の艦長が左遷された。皆、いい人だったのに……水雷艇だって、上が無理言うからあの設計になったのに……」

その年、政府は軍艦を作るためのお金を減らした。理由は作物が不作で、食料が足りなくなり、それの解決を優先するためだった。
資金を頑張って集めたけど、結局つくれた軍艦は小型のものが多かった。しかし、もっと強くしたいと思っていた海軍は、小型の艦の武装を強化することにした。
余ったものや、質の悪い鉄をかき集めて作った砲、いけると思ったら詰め込んだ。

結果、こんな悲劇が起きてしまった。

夜空さんと無理に仲良くする必要はないと思う。でも、これからのことを考えると作戦に必要な行動は出来るようになってほしいと思う。

「夜空のこと許さないと、私のことひどい奴って思う?」

「ううん、思わないよ」

「ありがとう……」

皆にも話して分かってもらいたい。上手く距離をとれるように、作戦の時も考えよう。
そして、夜空さんは独断での行動を避けさせないと。きっと優しいんだと思う。けど、中途半端な優しさは駄目なんだ。
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