封印の虹 Vivid army
「君は、本当は嘘をつくのが下手だろう」

嘘を……つくのが下手……?
急に、ヴァルハラの訓練をしていた頃のことを思い出す。


「葉月、あんたチョコ全部食べたでしょ!」

神無は私の目を見て言った。

「いっいや……食べてないよ……?」

思わず目をそらしてしまう。

「もう、食べたんじゃない!目が泳いでるよ!」

神無に言われ、しまったと思った。けど……もうちょい誤魔化せば!

「腐ってたから捨てたんじゃなかったっけ?」

そう言うと、神無はため息をついた。

「りんねって、嘘つくの下手だよね……ばれたときは素直に謝った方がいいよ。中途半端に上手くいっちゃったら自分が大変な思いするだけだからね!」


中途半端に……か。今まで上手くいっていたけど、もう無理かしら。
急に、心に涼しいような冷たいような風が吹く。

「はい、私は……今まで……」

もう、疲れた。どうなったっていいや。

「よかった……女の子にひどいことはしたくないからね」

穏やかな笑顔でそう言っていたのが逆に怖かった。
しばらくして、私を高速輸送艦の毎日が護送しに来た。私は外に出た途端側にいた人を突き飛ばした。

「なっ、まさか、逃げるのか!?」

上空から、艦長を見降ろす。

「祈望軍に協力するつもりはない!けど、空操禁書にも協力しないから!」

手錠のまま全力で逃げる。もう、理想の世界もどうでもよくなった。けど、神無……あの子には無事でいてほしい。
もう何も無い私の、最後の願いだった。
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