封印の虹 Vivid army
私が劣等感の塊になったのは、士官学校に入ってからである。地元の小学校にいたころは、天才ともてはやされていた。特に美術分野や作詩では何度も表彰され、このままいったら何にでもなれると言われた。
そんな私は5年生の時に軍人になりたいと言った。周囲からは反対された。周りの人は軍や戦争を嫌う人が多く、軍人になるなら縁を切ると言われたこともある。

「どうしてあんなひどいことをしに行くの!未確認生物を殺すなんて……命は皆平等なのに……」

母は最後まで泣いて反対した。動物愛護団体の一員だった母は、人に危害を加えるとはいえ祈望軍のやり方に反対していた。他の人たちも、祈望軍を……軍という存在自体を批判する。私の一族は昔の戦争でいろいろなことがあり、そのことを話し続ける。1番多かった言葉はあなたには無理、だった。

「確かに私は体力が無い。体格だって良くない。けど、それを補うものがある。道具を上手く使えばその差は縮められる」

これで無理とは言えなくなった。

「それに、誰かがやらないといけない。もし皆が罪悪感を感じるから嫌だと言うなら私がやる。人が嫌がることをするのには慣れているから」

「でも、俺たちはいつも軍に苦しめられているんだぞ!人の気持ちを考えない奴になりたいのか!?」

「軍とはもともと人を守るべき存在だった。でも逆に人を傷つける人もいる。だから、人を守るために戦える人が変えていかなければいけないんだ!」

ここまで言うと周りの人は、勝手にしろと言って諦めた。母は、2つ下の弟と年の離れた妹に、お姉ちゃんみたいに軍人にならないでと言い聞かせた。

学校では先生に、将来は参謀になるだろうと言われた。応援してくれる人もいた。けど、いじめっ子はお前になれるわけがないと言って馬鹿にしてきた。そのたびに、軍人になって見返してやると思っていた。
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