封印の虹 Vivid army
倉庫に着いたけど誰もいない。もしかしたら遅れてくるのかもしれないと思い待つ。それから何分か経ち、待っていた人は来た。

「ニア、用事は何なの?」

ニアは1人で来たようだ。待っていたところを捕まるというものではなかったらしい。

「用事?そんなの決まってるでしょ、しらばっくれないで」

もうばれているらしい。この後私は捕まるのだろうか。軍法会議……はどうだろう……安田の事笑えなくなったな……こんな時なのに不思議と落ち着いている。でもこの態度が相手にとっては良くないらしい。

「あんなことしておいて普通にしていられるんだね」

「まあ逃げようとか思ってないし……もうどうだっていいよ」

「本当にいいんだね」

ニアはナイフを取り出す。まさか……この展開は……

「私ね、秋哉君と付き合ってたんだよ。でも、虹に取られたし秋哉君は……」

ニアは泣いている。ニアはあいつの本性を知らないのだろうか。それか知ってても好きでいられたのだろうか。それだったらすごいな。

「秋哉君の苦しみはこんなもんじゃなかったんだからね!」

ニアはもう復讐の事しか考えていない。止めたって聞かないだろう。私の人生、意味はあったのかな。いつも人にいじめられて、存在感も無くて、いなくても気付かれない。だから見返すため、気付いてもらうため優秀でいようとした。今になって思う。

後悔したがもう遅い。本当の、そして最後の願いは、叶わない。あの本に出会わなければ、あるいは別の本だったら良かったのかもしれない。いっそ、神と呼ばれない世代だったら、彼女もアブソリュートの一員であればこうならなかったかもしれない。


いじめられたり、恨んだり恨まれたりもせず……友達と仲良く……平凡に生きたかったな
< 30 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop